のべミート with 井上味噌醤油

 

のべミート:延 隆文さん
井上味噌醤油:井上 雅史さん
インタビュー:吉川 倫平(pignon 代表、TurnTable プロデューサー)

 

■味噌を育てながら、樽も育てる

 

吉川)今日インタビューに行ったのが上勝のクラフトビールの会社だったんですが、そこで樽の熟成させるビールを創られているんですね。それがシェリー酒のようにとろとろなんですよ。

 

井上)あそこの会社は杉の新樽でも作ってますよね?木香(きが)が乗るんですよ。あそこの向上のオープニングパーティーでも原田君の樽でビールの鏡割りをやったって聞いてます。原田君が作った木樽はウチノ味噌でも使ってるんですよ。

 

吉川)すごい!

 

井上)うちの話であれなんですけど、木樽が百年以上経ってるんですね。古いんだと150年経ってると思うんですけど。百年ものやったら、一年一回仕込むんであれば、百回仕込んだものになってますよね。その分が吸収されて、それが味噌に戻って、ぐるぐるぐるぐる循環している。

 

 

吉川)お味噌もワインやウィスキーなんかのお酒と一緒ですよね。その分年輪を重ねて味わいが少しずつ変わっていきますよね?

 

井上)そうなんです。
木樽を洗う作業をするんですけど、熱湯で洗うんですけど、ほんとお味噌汁の濃度のものがずっと出るんで、洗っても洗っても出てくるんですよね。

 

吉川)さっきも聞いてたんですけど、イングランドとかの話らしいですけど、貧乏でお酒を買えない人が、多くのウイスキーをつくった樽だけを買って、その中に水を入れて、しばらく置いといてその水を飲むと。その溶けだした分だけで楽しむというのが発想の始まりらしいんですね。

 

井上)なるほどー。それに近いものがあると思います。

 

吉川)味噌樽を洗ったお湯。おいしそうですね(笑)

 

井上)そのままですけど(笑)このぐるぐるぐるぐる回ったるのが、ほんとは化学的には証明もされてませんし、何がいいんだって明確には説明できない部分ではあるんですけど。でも、それがあるから違うみたいな感触があるんですよね。やっぱり昔のままの流れの中でやってることというのが、体感で良いのはわかるんですけど、化学的には必ずしも分からないんですよ。

 

吉川)いや、やっぱりウナギ屋さんがタレを百年注ぎ足してるのと同じような感覚ですよね?

 

井上)まさにそれですよ。

 

吉川)だから、いきなりつくると思ってもできないものですよね?そういうことですよね?伝統ですね!

 

井上)ウナギ屋さんの話など聞くと「そんなー」って思ってたりしてたんですけど、うちも、2年前に新しい木樽をつくってそれで仕込んでみたんですね?そうすると古い樽のもんと比較すると全然違うんですよね。木樽が大事と思っとったんですけど、これだけ違うか?という結果で、ちょっと強烈に、伝統技術というものを思い知らされた機会でした。

 

吉川)なんか、時間をかけないとできないものがあるというのは、ちょっとこうロマンがありますよね?

 

井上)ちょっとなんかかなわないって感じですね。

 

吉川)どうしようもない。

 

井上)どうしようもない。やっぱり続けるということを真剣に、考えていかんなと思うとるんです。さいわい徳島には先ほどの原田君という木樽職人がいますんで、続けることが可能というか、大事にしていきたい。

 

吉川)ああそうなんですね?

 

井上)いま全国で、木樽職人としては唯一受注を受けれる状態にあるので、ありがたくて。のべさんと一緒に、お肉も含めて、そのお味噌と肉で漬け込んでみたいなぁと・・・

 

延)どんなにおいしいものができるんかと(笑)

 

井上)それが百年たつと、味噌もお肉もいらんみたいな(笑)

 

吉川)樽をなめるという(笑)

 

 

■生き物相手に取り組む

 

 

 

吉川)僕もイベントで、延さんの肉を使わせていただいてるんですが、僕のお肉の印象としては、何というか、万能というか作り手としてはすごく楽なお肉なんですよね。
あのーなんだろう。例えばいい素材というのは「できるだけシンプルにするのが一番だ」みたいな考え方もあるんですけど、僕が感じた延さんのお肉に関しては、もちろんいい肉としてシンプルで絶対おいしいんです。
でも一方で、手をかけてもおいしいし、複雑なことをしてもおいしいし・・・なんていうんだろう、こっちがいろいろ挑戦してもいいし、しなくてもいいという、こっちの気持ちが問われるお肉という印象です。
そこまでのクオリティでないお肉とかは、そこまで手を掛けずにシンプルのみがいいという場合もあるんですよ。
だけど、そこに手を加えても加えなくても、どこのラインもいける。でもすごく優しいと言えば優しいし。

 

延)私もやっぱり食べやすい肉というのをめざしてて、そんなに手を加えなくてもおいしいというのを目指してるんで・・・
そこを最終的には目指してるんですけどね。

 

吉川)そうですね。
なんか手を加えなくても、それはそれですごくおいしいんですけど、でも手を加えてもおいしいですね。
余計なことをしても、肉の存在感が強いので、作り手のあそびごごろを満たしてくれるというか、これは作り手の意見ですけど。やっぱり焼いただけではつまらない、ちょっと手を加えたいというときに、それを出してもちゃんと答えてくれる。なんか芯の強さを感じます。

 

延)あの肉の味というのはメスにこだわって、産まずのメスにこだわって、あとはもう、あとは環境、空気と・・・
やっぱり田舎なんですけど、それでもできるだけ地下水使ったり井戸水使ったり。あと気候ですよね・・・
できるだけストレスなく、ゆっくり育て上げる肉ほどおいしいと思ってるんですよ。
育てる側の偏見かもしれないですけど。

吉川)いや、やっぱりそうですね。ストレスが牛に絶対ないほうがいい。

 

延)いいんですよ。あのージビエとか野生のものの肉と同じ感じで、飼われてるんじゃないという感じで、育てようとしてるんですね?牛もなんか自分で生きてるって錯覚するような感じ。そんな感じですね。
それがおいしさにつながっているというポイントとして、やはり霜降りというよりは赤身のお肉をどんだけおいしく作るのか?そこを一番に考えて育ててます。餌にもよりますけどね。そういう風にいまの時代に会うような餌のやり方も考えて、できるだけ味のあるおいしい肉をつくろうっていう気持ちはこれからも前向きにありますけどね。

 

吉川)その思いなんですけど、料理をつくってる側には、伝わっていて、僕は重々感じたんですけ。
もちろん食べてる人に必ずおいしいって言ってくれるのでいい循環なのかなとぼくは思うんですけど。
たのしみですね。

 

井上)懐が深いですね。

 

延)一生勉強ですよ。どんなに愛情込めてもね100%は結果を返してはくれないんですよ。生き物というのは。
なんか違った要素があるんでしょうね?いつも100%ってみんなで頑張って作ってるんですけど・・
まぁ作ってるっていうと、うちの牛に失礼なんですけど、育てるんですけど、僕が死ぬまでには結論出ないかもしれないですけど、もうできるだけ前向きに頑張っていこうと思っています。

 

吉川)なんかそう牛を育てている人が、お肉を自分で売ってるっていうのが、やっぱり買う側としても信頼感があるんです。普通のお肉屋さんはねどっかで育てられた牛を集めてきて売るというのがほとんどですけど、自分の育てたお肉は自分で売るそのスタイルも、全てが一貫してるというのが信頼の証というか・・・

 

延)だから自信を持ってね。顔が見えるというのもやっぱりプレッシャーかかるんですよね。だからできるだけ牛に恥じないようにちょっと頑張って売ってます。

 

 

井上)すごく素朴な質問なんですけど。牛に名前って付けます?

 

延)あのねぇ。実はつけてるんですよ。

 

井上)ほお!

 

延)愛情はあるんですけど、やっぱり経済家畜っていうんですけど牛というのは。
でもまぁ飼ってるていうよりは、育て上げてるっていう気持ちで、大きく仕上げて、将来皆さんの口に入った時に喜ばれる。そのために牛を育ててるという意味で愛情をこめてますから。愛情表現難しいんですけど・・・

 

井上)うちも麹菌を相手にしてるんですけど。

 

延)そうですよね生き物ですもんね?

 

井上)結構、大きく裏切られるんですよ。

 

延)おお!

 

井上)それが自分らが知ってる範囲でこうだろうと考えてるもんが、ぽんって飛び越えてくることがあるんですよ。
こんな全然想像の範囲外だってことが起こるんですけど、その生命力で条件が悪くてもぐーぐーって成長するということもあるんですよ。

 

吉川)ハイハイ。

 

井上)しくじったと思てもぐーって来ることもあるんですよ生命力というのは。
なんか、全然僕ら飼えてないというのを感じますよね。生き物を相手にしてると・・・
こうである、ああである、こうしたらこうなる、というのは常にあるんですけど・・・

 

延)僕らも作ってるんですけど。生き物を最大限に活かすことに関しては同じだと思うんですけどね

 

吉川)僕ら側とすると、皆さんが「生き物」を相手ご苦労されて、常に状況の違う中でご苦労されてやっとこう仕立て上げたもの。でも出来上がったものって安定してるじゃないですか?僕らはその安定したものを使わせていただいてるので、作り手として自分の状態が問われるというか・・・素材は安定しているので、あとはこっちが安定していないといいものが作れないていうとこがすごくあるんですよね。
いいものを使えば使うほど、こっちの姿勢が問われる。ある種挑戦しなきゃいけないし、ちゃんと律しないと立ち向かえないというのをすごい感じますね。

 

井上)じゃあ、どんどんいいものつくってプレッシャーかけんとダメですね(笑)

 

延)まぁ常に挑戦ですけどね。きりがないんですよ。ほんとうに最高のものをつくろうと思うということは・・・
でも最高のものをつくりたいという気持ちがあればね、満足せずその気持ちを続けて持って取り組めば、いいものができるかなぁと思っているんです。その気持ちで日々頑張ってます。

 

■良い食材で料理をつくるということ

 

井上)以前、食べさせていただいた料理の中で、お味噌で料理をされることはほぼない思っていたんですけど、味噌漬けのお肉があったのを覚えてて、ちょっとなんかこう作ってる方も、味付けというかお味噌の居場所というか、まだまだいろんなところにあるっというのを発掘していただけるんで、いつもワクワクしてます。

 

吉川)そうですね。実は僕はお味噌というのは昔から、味噌漬けっていうのをやっていて、あの時は確か豚肉をつけたものを炭でグリルして、やらしてもらったと思うんですけど。
なんていうんですかね。あれは純粋に味噌だけなんですよ。ほかの味は全く入れてないで。だからそれでこうなるんだという。むしろ、いい豚を単に焼いて食べるよりおいしいじゃんっていうのをあの時感じて、やっぱり味噌の浸透圧で肉の中に味が入るというのもあるんですが、その味が味噌の味がすべてなんで、そこが良くなかったらおいしくなくなっちゃう。あとは豚の余計な水分も抜けて、いい触感と中がしっとり仕上がるという。味噌は本当にすごいなって思ったんですよ。

 

井上)作り手としてはすごい自信をいただいたんですよ。うちの味噌やれるな!ていうね。伝統的な部分が色濃いんですけど。どんどんどんどんいろんなところに派生していただくというのが、なんかこううれしい発見ていうね。

 

吉川)味噌自体は、もう海外でも結構トップレストランでも使うようになってきているので、和食に限らず西洋の料理でも使うようになってきているんです。そういう可能性はほんとあるんですよね。
発酵食品自体が、世界のトップクラスのレストランでも、こぞって使い始めてて、こないだも北欧のレストランに行ったんですけど、北欧はトップクラスのレストランがたくさんあるんですけど、みんな発酵やっていて、味噌のソースやったりとか、味噌でマリネしたりとかをやってることもあったので。

 

井上)うーん世界的に流れが、そうなんですね?

 

吉川)本当に可能性があると思うんですよね。

 

井上)いわゆる本当のお味噌の特性として、日本の四季があって、本当の天然醸造というのはいわゆるほかの地域では、なかなか作れなかったりするんですよね。例えば日本はこの大気中に麹菌が住んでるから味噌が作れるんで、日本ならではの産物なんですよね。

 

吉川)なるほどねー。すごい不思議ですよね。他の場所ではできな食材って・・・

 

井上)なんで胸張ってやっていきたいですよね。やっぱりいろんな環境が整ってないと、ひとつのサイクルを回せないっていうね。逆にいうとそういう環境があるからそうゆう作り方が発展していったと思います。
先人がね試行錯誤しながら構築していった工夫の蓄積が、天然醸造という方法やと思うんですけどね。

 

延)奇跡の産物ですよね!

 

吉川)だれがこれを思いつくんだろうと思いますよね?

 

井上)お酒もそうですし、お醤油もそうですし、漬物もそうですし。

 

吉川)日本の風土に合って自然とそうなるという感がすごいですよね。
徳島の鍛冶屋さんにも話を聞いたんですが、一番最初に始めた人って、要するに丸くて熱い鉄をそれを打ってどんどん形にしていって、最後刃をつけるという工程ですけど、その製法が、いまも昔と同じ工程でやってるんですよね。
それが実は全部科学的にも理に適っているという形で、最初どうやってそれを見つけてそういう風にしたんだろう?ていうのをすごい不思議に思いましたね。

 

井上)いわゆる極めている環境ですよね!

 

吉川)無駄は一つもなくて。なんていうか、かなり洗練された技術と洗練されたものだけで組み合わさって最後の一つの製品になるっていうところをほんとなんていうか・・・お味噌も一緒だと思うんですけど。

 

井上)完成されてる作り方をして化学的には解明されていないんですけど。つくり方は完成されていて、そこから1点あげるのがすごい難しいというか、逆に点数を下げないことに一生懸命というか・・・1点あげるつもりがちょうどになる感じですけど。なかなか(1点が)乗らないですけどね(笑)

 

吉川)今日お二人がいらっしゃるので、延さんのお肉と、井上さんのお味噌を使った料理を考えているんですけど。
なんていうんですかね。もう自然の流れというか、二つとも洗練されたものであるというのはもう見るからに明らかなので・・・そこの流れというのは自然の流れだと思うんですよ。
ほんとうはもっと時間があれば、延さんのお肉を井上さんの味噌に漬けこんで、ていうのもやっては見たかったんですけど。今日は、お肉の方はシンプルにステーキにさせていただいて、井上さんのお味噌でソースをつくらせていただいてます。地元の野菜と合わせてソースにしてますので。それこそ今日はシンプルな料理なんですけど、ほんとにどっちでも延さんのお肉は、答えてくれるんでなので、作る前から自信があります。ちょっと調理をしてきます。

 

吉川)今日のメインのお皿で、延さんのお肉とそれから井上さんのお味噌を使わせていただいた料理になります。
まずお肉の方はシンプルにほんとに塩だけでステーキにしていて、少し焼いたあと少しおいて余熱でピンクになるように仕上げました。おソースの方が白みそですね。今日は、あまり甘くない味噌ですよね。西京味噌ほどは甘くない味噌とネギとしいたけ(天恵菇)をソテーしたものと、ちょっと鶏肉を使ったお出汁で少し伸ばしてソースにしました。さっきも言いましたけど素材が間違いなさすぎるので間違いないです(笑)。ご賞味ください。

 

延)いただきます!

 

井上)いただきます!

 

延)ん、めっちゃうまいです。このソースめちゃくちゃうまいですね?!

 

吉川)ベースがいいので何やってもおいしいんですが、少しバターいれて、ちょっとだけ洋風になってると思いますけど。少しだけアレンジして・・・

 

井上)何かが立つって感じじゃないですね・・・全体が・・・すごいおいしいですね。
何味というか・・・分からんですね。これお味噌とは、なかなか気づかないんじゃないですか?

 

延)でもベースには味噌の香りしますよね?

 

井上)おいしい!

 

 

吉川)(素材が)間違い無いんですが、考えたのは、それそれの個性がしっかりそれぞれあるので、そこをどうバッティングしないようにマッチングさせるかということだけを考えて・・・
お味噌のソースなんですが、他の野菜と合わせてまろやかにして、お肉の赤身部分がかなりいい赤身だったので、もし脂の強いお肉なら、もっとお味噌よりのソースにしてもいいんですが、お味噌とおいしい赤身の部分ちょっと繊細な部分とイメージは持って作っています。

 

延)お味噌のうまみとお肉のうまみが合ってますよね?

 

井上)ほんとに喧嘩していないですね?

 

吉川)個性がそれぞれ強いので 逆にそこしか意識していない。喧嘩さえしなければ絶対間違いない。

 

井上)昔からあるどこかの国の定番料理みたいなすごいまとまり方で、すごいおいしいです。
なんかいっぱい食べれます。

 

延)もうい一気にほうばりたいですね。味噌とお肉をガバーッと!

 

井上)このソースは赤身に合わせてますか?

 

吉川)このソースは赤身を意識しています。もうちょっと霜降りが入ったりしたらソースの感じを変えたりしたほうがいいかなと。作り手さんを前にするのが一番緊張します。

 

井上)驚かされます。感動します。
味噌っていうものをつくっている身としては、結局、どうしても味噌汁という枠の中での勝負って、そこが主戦場という気持ちがあるんですよね。でも、このような料理を食べると、その枠を大きく飛び越えるというか?枠を突き破る「新しい味」の体験になりました。でも、食べた後に「これって昔からあった伝統に裏打ちされた料理?」ていう感情も出てくる。「新しくて、懐かしい料理」・・・それにウチの味噌がついて行けたってことに、すごく感動してます。

 

延)ウチの肉もついて行けたかな? 

 

吉川)いや、お肉も間違いないです!

 

井上)いや止まらないです

 

延)完食させていただきます。

 

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